疊 永瀬商店|NAGASE tatami

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畳ができるまで

夏の訪れは、
イグサ刈りが
始まる合図。

「畳表」の原料となる植物・イグサを植えるところから、畳づくりは始まります。夏に苗を育て始め、冬に圃場に植え替え、半年以上生長を見守ったものを、翌夏収穫するというサイクルです。毎年7月1日。多くのイグサ農家が、イグサ刈りを始めます。イグサ刈りの準備として欠かせないのが、「網外し」という工程です。イグサは成長すると大人の身長ほどにまで伸びる植物。風や雨で曲がってしまわないよう、網をかけて真っ直ぐ伸びるよう支えています。そのため、収穫期に入ると、翌日刈り取る範囲のイグサから網を外して、刈り取り機で刈りやすいよう、寝かせておくのです。

まだまだ暗い
午前2時、
収穫スタート。

前の日に網を外しておいたイグサの圃場で、専用の収穫機によるイグサ刈りが始まります。あたりはライトがなければ何も見えない、真っ暗な闇の中。短い期間で一気に収穫を進めようと、真夜中からイグサ刈りを始める農家も少なくありません。早い時にはなんと午前2時から。収穫機で何十回も圃場を往復しているうちに朝焼けを迎えますが、収穫作業はまだまだ止まりません。

みずみずしさを
保つ、
冷たいシャワー。

収穫したイグサは、約2キロずつ束ねられ、圃場から作業場へと運ばれます。そこで待っているのは、冷たい水の「シャワー」。乾燥しないよう、念入りに念入りに、シャワーを浴びさせます。小さな石や虫なども一緒に流れていきます。十分に潤ったら、次の工程のため少し休憩。

鮮やかなイグサの色を
保つために欠かせない、
泥染め。

続いては「泥染め」。あまり知られていませんが、畳の美しい緑色やツヤを保つために、欠かせない工程です。2〜3種類の染土を混ぜ合わせ、大量の水と合わせた泥水の中に、イグサを沈めます。ざぶざぶ、ざぶざぶ。着物を洗うように、念入りに、丁寧に。30秒から1分ほどしてから、ゆっくりと引き上げます。

熱をかけ一晩じっくり
乾燥させる、
釜入れ。

泥染めを終えたイグサは、そのまま「釜入れ」へ。一束ずつ丁寧に、ボイラー室に立てかけていきます。生産者によって異なりますが、おおよそ70℃で約12時間。熱が漏れないよう、密閉した空間でじっくり乾燥させていきます。イグサの長さ、太さ、育ち具合によって温度や時間を微調整しなければならないので、生産者の経験と勘が重要なポイントです。

乾燥したイグサを
取り出す、
釜出し。

多くの生産者は、夕方から夜にかけて「釜入れ」を行うため、朝早くに乾燥が終わり、ボイラー室からイグサを出す「釜出し」の作業が始まります。束に乱れがないように揃えながら、余分な泥を落とし、4束で1つのまとまりにしてビニール袋へ。ここから60日以上、寝かしの期間に入ります。

久しぶりに光の下へ。
「畳表」になるための
準備を念入りに。

短くとも60日間以上、長い場合には約1年間寝かせたイグサを蔵から出すと、2束ずつ選別機へ。おおよそ5~7段階の長さ別に、イグサを選別していきます。選別後、ゴザ織り作業をスムーズにするため、スプレーでまんべんなく霧を吹きかけて、一晩寝かせます。そして翌日、織機にかける前に、赤く変色してしまったイグサや、折れてしまったイグサを、センサー付機械と生産者の目の二段構えで選別。根本をきれいに切り揃えてようやく、織機へと移動します。

小気味良い
リズムが響く
織機にかけられ、
「畳表」に変身。

畳の織機は、左右からイグサを2本ずつ引き寄せ、4本で1回織るという作業を繰り返します。品質や畳問屋からの注文によって多少前後しますが、1畳分の「畳表」には、約7000本ものイグサが使われています。糸の種類も畳によってさまざま。実は産地によって異なる色や柄の糸を使うため、畳の問屋や生産者が見ると、どこの畳かすぐにわかってしまいます。

機械とお日様で
「乾燥」。

織り上がった「畳表」は、傷などがないか生産者の手でチェックした後、乾燥機にかけ、余分な水分を飛ばします。さらに翌日、青空の下で天日干し。湿度計を使い、最適な湿度になっていることを確認してから丸めて仕舞います。

イグサ生産者から、
問屋を経て、
まちの畳屋さんへ。

大切に育てられたイグサは、生産者の手で「植物」から「畳表」になった後、問屋の厳しいチェックを経て初めて商品になります。この間も、湿度や汚れに細心の注意を払い、品質を保ちます。やがて、まちの畳屋さんのもとに「新しい畳をつくりたい」「畳表を替えて欲しい」という注文が入ると、畳屋さんは問屋から「畳表」を買い付け、「畳表」が「畳」の一部になる作業が始まるのです。

古い「畳表」を剥がして
新しい「畳表」を貼る
表替え。

畳の表替えの場合、店舗や住居から引き上げた畳を作業場へ運び、古くなった「畳表」を剥がしてから、新しい「畳表」を貼ります。「畳表」がたわまないよう、畳床の大きさに合わせてピンと張り、端を切り落とすと、機械で「縁」を縫い付けていきます。1枚の表替えにかかる時間は、約30分です。

約1年半の時をかけ、
イグサから畳へ。
あなたのおうちへ。

小さなイグサの苗を育て、網をかけ、網を外して刈り取り、シャワーをかけ、泥で染め、釜入れ、釜上げ、60日以上寝かせてから選別、織機、乾燥… 1枚の畳ができるまでには、最短でも1年半の時間と、たくさんの人の手がかかっていました。あなたのおうちの畳には、どんな人々が携わっていたのでしょう。願わくは、「畳の上で心地よく過ごしてほしい」という生産者、問屋、施工店の思いが、伝わりますように。